同志社大学法学部を卒業後、大手金融機関での法人営業というキャリアをお持ちの北田代表。その後、弁護士を志していたときに父親の申し出を受け、葛藤の末「お世話になった親や会社に対して恩返しをしたい」と事業承継を決意されたそうです。そんな北田代表に経営方針や採用にかける想い、今後のビジョンなどを伺いました。また、北田代表は一般社団法人SDGs推進士業協会の理事も務めておられます。

採用では「奥深さや面白さ」をわかりやすく伝えることに力点を。

──経営方針として採用に注力されていると聞いています。

空前の買い手市場が続く中で求人媒体に出稿するだけではなく、学校を訪問して当社の働き方をお伝えしたり、求職者を直接スカウトするプラットフォームを利用したりと色々な方法にチャレンジしています。当社は求職者にとって身近な製品ではなく「ものづくりを支えるものづくり」をしている会社なので、その特色をオウンドメディアなどを通じて伝える「ブランディング」に力を入れていますね。

たとえば大学の研究室で使われる「超伝導コイル」の設計や製造に対して、「面白そう」と興味を持っていただけると同時に「自分には難しいのでではないだろうか?」と感じる方も多いんです。そのため「ものづくりの奥深さ」や「職人が丁寧に教えるので安心です」といったメッセージを届けることに心を砕いていますね。また、人事考課制度の設計にも力を入れて入社後のキャリアップをイメージしやすいようにしています。

──経営者の役割として、意識されていることはなんでしょうか?

先々を見据えて「リスクヘッジを考えること」ですね。「売上が減ってしまったらどうするか?」「こんなトラブルが起きた時にどうすればいいのか?」など、最悪の事態を想定してその前にできる手立てを考えるのが私のミッションだ仕事だと思っています。

チームビルディングへの変革と、時流に求められる新ビジネスへの挑戦。

──3代通じて大切にされている考えや、価値観などを教えてください。

創業者の祖父が掲げた経営理念を、10年ほど前に幹部で集まって改めて意味を解く機会を持ちました。「奉仕と誠意の精神により豊かな人間社会の創造を指向する」という想いは、困っているお客様の役に立つ仕事をすることで、その先の「社会」の発展につながることだと考えています。そのため、基本的に依頼は断らない方針にしています。部品の故障でお客様の業務全体が止まってしまうという場合もあるので、可能な限り叶えていくことを目指しています。ごく稀に現場から「こんなんできへんで」と言われることもありますが、「そこを何とか!」と(笑)。

また、創業時は電車モーターの保守などを手掛けていましたが、時代の移ろいとともに企業や大学などの依頼を受けて試作品をイチから企画・製作する開発力を持つ今のビジネススタイルに変革しました。これは私だけの力ではなく、みんなの協力あってこそ出来たことです。

──社長になられて、変えたところはありますか?

良くも悪くも自己完結型の「職人マインド」だった風土を、チームビルディングに切り替えていきました。そのために、組織の改善活動をしたり、それぞれができる業務領域を増やしていきながら個人プレーから脱却しましたね。

あとは新しい業態や新サービスへの積極的な取り組みです。これから始めようとしているのが、自動車部品の商社のようなビジネス。名古屋にはティアワン(一次サプライヤー)が多く存在するのですが、そこから先のティアツー以降に発注するとき、各社の専門領域などを把握できずに混乱を生じるケースがあります。そこで当社が要件をヒアリングし「どの会社なら、何ができるのか?」を鑑みて橋渡し役になるのです。これ以外にも色々仕掛けており、今後は売上を2桁億円に拡大したいと考えています。

絶妙な距離を保つのが、マネジメントの秘訣のひとつ。

──今後どういう会社や組織にしていきたいか教えてください。

社員には色々な経験を積んで成長して欲しいと思っています。新しいことへの挑戦は楽しいだけではなく、ときにはしんどいこともあるでしょう。しかし、やはりそれがなければ本人も会社も前に進むことはできません。無理をしない範囲に調整しながら、チャレンジを促すのが私の責務のひとつだと考えています。

──マネジメントで工夫されていることはなんでしょうか?

社員との距離の「バランス」ですね。社長が近づき過ぎるとちょっと引くでしょうが、かといって遠すぎると「見てもらえてないのでは?」という心象をもたらしてしまいます。ものの言い方ひとつとっても、「将来こうなって欲しい」と思って話している内容でも、本人のモチベーションに繋がらないこともあるでしょう。そこで、「とにかく話を聞いてベクトルを合わせる」ことを心がけていますね。「相手がしゃべり終えてから、それを受けてこちらの考えを伝える」ことを意識しています。会議室だとかしこまってしまうので、ときには立ち話をしながらなるべく本音を引き出すようにしていてますね。自分が100%正しいわけではないので、言葉のキャッチボールが大切です。

──どのような方に入社してほしいとお考えですか。

シンプルにいうと「ものづくりが好き!」という方ですね。そして良いものを作るために「創意工夫」「新しいこと」にチャレンジしたい方に向いています。当社は失敗しても怒らない風土なので、萎縮している人はいないと断言できます。理系の方はもちろん、文系の方も大歓迎ですよ。ぜひ一緒に「ものづくりを支えるものづくり」で社会に貢献していきましょう!